パリの日本レストラン業界の現状について
パリにおける日本料理店は、寿司を中心にラーメン、うどん、焼き鳥、丼もの、懐石、串カツ、お好み焼き等あらゆる分野に及んでいますが、それらの店がいずれも繁盛しており、
現在日本料理は、パリのフランス人の間では、健康食品ブームといった一過的な流行の域を脱し、日常の食生活メニューとして定着しつつあり、料理の1ジャンルとして確実に市民権を得ているといえます。
たとえば、パリ市内の寿司屋の数は、パリ20区内で800軒、イール・ド・フランス内で1200軒といわれます。このほか、いわゆる日本料理店はラーメン屋うどん屋等々を加えれば、数え切れないぐらい多くあります。
何故これほどの日本料理を称する店があり、いずれも商いを維持していけるのか、その理由を次のとおりと捉えています。
- 価格が手頃である点
庶民的な日本料理店は概して手頃な価格設定をしており、日常的に利用しやすい。 - 料理の出が早い点
ファストフード並みに注文してから料理が出るまでが早いことが、特に若いビジネスマン層に受けている。 - 満腹感がある点
パリの寿司はシャリが硬く握られていて量が多い。ラーメンその他でもとにかく量が多く満腹感がある。 - 味がフランス人の嗜好にあった点
パリにおける日本料理は、日本人の食感からすれば、必ずしも美味とは思えないのだが、フランス人には受け入れられている。 - 健康食という定評が出来た点
フランス人は他の欧米諸国に比べ、男女とも肥満体の人が非常に少ない。
健康のためか美醜にこだわるためかは定かではないが、食生活にはかなり敏感であり、日本食の人気につながっている。 - 家庭では作らない点
フランス・イタリア・中華料理等は、フランスの家庭で調理し作られるが、寿司等日本料理は、在仏日本人以外はまず家庭では調理しない。
いきおい日本料理は、レストランを利用することが多くなる。
このようなことから、現在RESTAURANT JAPONAISはまさに隆盛ですが、その将来性はどうなのかを問えば、業界に詳しい人たちの多くは、「将来ますます栄える」という楽観的な見通しを答えます。その根拠は、現在日本料理を選択し食しているのは、主として若い年代層であり、今後もその嗜好を継続するうえに、次々と新たな若者が生まれてくるので、当面需要の減退は予想できないという意見です。
実際店頭に立っている日本人でそのことを実感している者が多くいます。フランスの若者は、一度来店して気に入ったら、毎日同じ時間にやってくるという。その数が日増しに増えて行くのがよくわかるとのこと。
一方、これら日本料理店の経営の主体は誰かといえば、先にあげたパリ市内の寿司屋約800軒の内、日本人の経営になるのは、65軒ぐらいといわれ、後は中国人、一部にフランス人、モロッコ人が経営をしており、しかも、日本人の経営になる店もその料理人の多くは中国人です。
パリにおける日本料理店の実態を忌憚なく言えば、その内実はほとんどが中国人によって差配されているとしかいえない状況にあります。
そのことの是非はともかくとして、パリの日本料理店は、量的拡大の時代から、質的向上の時代へ移りつつあると捉えており、日本の気鋭の経営者の参画が待望されるところです。
パリにはジェトロパリセンターが支援する日本食レストラン価値向上委員会という組織があり、この委員会が発刊している「日本レストラン・ガイドRestaurants Japonais Guide 2007」で、50軒余のレストランを、正統派日本料理(CUISINE JAPONAISE AUTHENTIQUE)として推奨しています。
庶民的な店から懐石料理店までさまざまな店が推奨されていますが、ここに紹介されていない店でもよい店が多くありますので、必ずしもパリの実情のすべてを言い得ているわけではありません。
ただ、「正統派日本料理」といわざるを得ないほど、パリにおける日本料理店は多種多様になっており、一種の混沌状態にあるわけです。
先に述べましたとおり、中国人をはじめとして各国の料理店経営者が日本料理店(RESTAURANT JAPONAIS)と称しているのは、そうすることによりフランス人を多く集客できるからに他なりません。このことは決して悪いことではなく、日本人がレストランを起業するには恵まれた環境と考えます。よき日本の味を庶民的な価格で提供すれば、間違いなく客の集まるよいレストランができると考えるものです。
また、やや衰退気味に見えるフランス料理店についても、日本人の繊細な味覚と技術を持ってすれば、まだまだこの分野でも活躍の余地はあるのではないかと考えます。
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